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木に生るコラム

8.補助犬法と「その手の人間」

 障害のあるなしに関わらず「その手の人間」というのはいるもので、時に、絶大な悪影響を及ぼしてしまうから恐ろしい。

 伊勢の内宮に「おかげ横丁」という人気のスポットがある。昔の町並みを模した一帯で安くて旨いものが食える。入場料なんてないから、ブラブラ歩くだけならすべてタダ。ただし、昔の建物の再現だから、ものを食う場所にしてもどうしても座敷が多くなってしまう。なかには、座敷だけの食い物屋だってある。

 最近、このおかげ横丁に盲導犬を連れた「その手の人間」が現れたらしい。食べ物屋に入ってきて、法律で決められたんだから犬も座敷に上げろと言う。法律を盾に取るのなら、こういう場合持っていなければならない犬の下に敷くシートは持っていないという。

 そう言われた方は、いくら法律ができたからと言って、食い物を扱う限りは、はいそうですかと、すぐに従えるわけがない。座敷だからテーブルが低い。大勢の客を一室に入れている。その間隔は狭い。衛生面でも問題があるし、犬が駄目な客もいるだろうし、アレルギーも心配しなければならない。

 店側は仕方なく、別室を用意した。こちらへ上がってくださいと。「あんたらは障害者を差別するのか」という答。(このセリフは、一種「この手の人間」の常套句なんだと思う。自分の行為が「差別」を生むということに考えが及ばない無知さ加減。)

 再び、しばらく、やりとりが続き、どうしようもなくなって、ついに店側は犬を同じ座敷に上げたという。「その手の人間」が帰るまで、他の客とのトラブルや保健所との対応を心配しながら。一緒に来ていた奴も何も言わなかったというから、同じ「その手の人間」だったとしか考えようがない。

 障害者が一般社会に出られるということは、その一般社会のルールを守らなければならないっていうことなんだけど、残念ながら、そのへんが全部抜け落ちている障害者も多い。そこにあるのは、まるで印籠を手に入れたような気分だけ。ねじくれた被差別意識だけを振りかざして、萎縮した自分の小さな世界の論理だけで社会と対面してしまう悲しさ。

 心配なのは、どれだけ苦労して手に入れた権利であったとしても、その発露がこんな形であったならば、単なる濫用としか思ってもらえなくなること。「障害を持っていてもがんばっているんだから」と先人の努力で得られたものが、一夜で「あんな身勝手な奴らは社会の害だ」というイメージに置き換えられる危険性だってはらむ。

 しかし、いくら嘆いてみても仕方がない。せめて自らの身辺だけでも清く明るく感謝の念を、持ち続けていたいのだが。

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